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【報告】第7回BESETO哲学会議

2013.01.28 石原孝二, 星野太

2013年1月5・6日に、ソウル国立大学にて第7回BESETO哲学会議が開催された。同会議は、北京大学・ソウル国立大学・東京大学が共同で開催する国際カンファレンスであり、哲学を専攻する三大学の大学院生たちの研究交流を目的として年に一度開催されている。

今回、東京大学大学院総合文化研究科からは計4名が参加した。以下に、参加した教員・大学院生の報告をそれぞれ掲載することにしたい。

石原孝二(UTCP/東京大学大学院総合文化研究科准教授)

BESETO会議は今回で7回目となる。私は2009年の3回目から参加しているが、回を追うごとに学生たちの発表のレベルやコミュニケーションのレベルが上がっているような気がする。BESETO会議は教員の講演もあるが基本的には大学院生に発表機会を与えるためのものである。北京大学、ソウル国立大学、東京大学の大学院生がネットワークを作り、哲学関連の教員が入り乱れて院生の発表に対してコメントを与えるという、他に得難い機会となっている。ソウルと北京、東京は相互に距離が近く、今後さらに哲学教育において連携していく必要がでてくるだろう。BESETO会議が今後もその重要なステップとなっていくものと思われる。なお、東大からの発表者は博士課程の学生に限られていたが、ソウルからは修士課程の学生も発表していた。修士課程の時からこうした国際会議で発表することにも意義があるだろう。今回駒場からの発表希望者はあまり多くなかったのだが、修士課程・博士課程に限らず、多くの学生にこうした機会を活用して欲しいと思う。(石原孝二)

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鈴木雄大(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

発表タイトル:Actions, Reasons, and Justification

昨年に引き続き二回目のBESETO参加でした。個人発表では、三カ国の誰にとっても外国語である英語を用いることから、イラストや表を含んだパワーポイントを使って伝えやすさを心がけ、そのおかげか多くの質問を頂き、活発な議論を交わすことができました。さらにその質問者のなかに、前回のBESETOで親交を深めた韓国の学生(彼女は留学中で残念ながら今回は参加できませんでしたが)と親しい学生がおり、国際電話を通じて留学中の彼女も交えて交流を深めるといった場面もありました。このようにして自分の研究を、普段なかなかできない国際的な文脈のなかに置いてみること、その重要性を今回も認識させられた会議でした。(鈴木雄大)

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逆井聡人(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

発表タイトル:Ara Masahito’s Discussion of Dogi (道義) during the Immediate Postwar Period in Japan: Possibilities and Problems

BESETO会議には今回始めて参加することになった。近代日本文学が専門の私にとっては、哲学というフィールドでの発表は始めてであり、さらに日本の戦争責任に関する議論を扱ったため、発表まで非常に緊張した。しかし実際に発表をしてみると、予想した以上に充実した議論ができたように思える。特に、懇親会の席で多くの方々から声をかけて頂き、真夜中になるまで議論をしたことは、今後の私の研究意欲を強く掻き立ててくれるものとなった。

会議全体としても、活発に意見交換がなされていたように見えた。ただ一つ残念だったのは、日中韓の三か国の研究者が集まってしかも英語で議論するBESETOという場自体の意味が捉えにくかったことだ。最後のセッションにおいてLee Sukjae教授のスピーチから議論が始まり、人文学という「権威」の在り方について日中韓の研究者がそれぞれの立場を表明する場面があった。私としてはその立場の違いによって生じる少しの「気まずさ」が非常に興味深かった。その「気まずさ」を追求することこそBESETOという場に向き合うことになるのではないか、と感じた。(逆井聡人)

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星野太(UTCP)

発表タイトル:Sublimity and Temporality: A Reading of Longinus' On the Sublime

BESETOは三大学の大学院生による発表を中心とする会議だが、今回はすでに7回目の開催ということもあり、過去の会議で出会った院生たちがさらに議論・交流を深める場面が随所に見られた。私は今回、全体セッションにおいて発表の機会をいただくとともに、大学院生たちのセッションで司会を務めるなど貴重な経験をさせていただいた。

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会議の内容にかかわる全体的な報告は英語のブログ記事に譲るとして、最後に今回の主催校であるソウル国立大学の方々に感謝を申し上げたい。寒さが厳しい季節のなか2日間におよぶ濃密な会議だったが、ソウル国立大学の方々による適切な運営のおかげで、われわれ参加者は多くの実りある発表や議論に接することができた。今回の主催校であるソウル国立大学哲学科の先生方、とりわけその中心となって会議の運営にご尽力いただいたLee Sukjae先生には深く御礼申し上げたい。(星野太)

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