破急風光帖

 

★ 日日行行 (51)

2016.07.31

 激しかった7月がようやく終ります。この一月、一日自宅にいられた日はたった1日しかありませんでした。「定年後」の生活、このようになるとは、われながら少々、予想外。

 で、いろいろあるのですが、この「激しさ」の頂点は、やはり23・24・25日と3日間連続で行われた山田せつ子さんのダンスの授業(IHS)でしょう。25日に、最後の発表会が行われたのですが、みなさんのダンスが素晴らしく、思わず「これこそ身体のデモクラシーだ」と呟いたほど。ひとりひとりが、まったくちがっていながら、そこに自我を超えた「生命のかたち」を踊ってくれていました。駒場でこのような瞬間に立ち会うことができるとは、と、このプログラムを構想したわたしとしては、感動の1日でありました。
 わたしももちろん、踊ったのですが、わたしだけは、半年前からのオブセッションで、ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を踊るといういささか無理な作品化を狙ったもの。昨年の笠井叡さんの講演のときに笠井さんが踊ったマーラーの交響曲第5番アダージェットを流して、それを、論考の7つの基本命題で断ち切るようにしながら、最後に、「語りえないものについては沈黙しなければならない」の「沈黙」を斜線で消して、その上に『ダンス」するというマニフェスト。そう、語り得ないものについてはダンスしなければならない、それこそが、生命というものなのだ、という主張でありました。
 そのように、わたしにとっては、ダンス(◯◯ダンスというようなものではなく)というものは、人間の存在の本質です。山田せつ子さんの授業を通して、そのことを学び直しました。そして、それは、わたしのように、高齢者のカテゴリーに突入しかかっている人間には、決定的に重要なことなのです。2年間の山田せつ子さんのワークショップに参加することができたのは、わが人生の「宝」ですね。心より感謝しています。素晴らしいレッスンでありました。いまでも感動が続いています。

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