破急風光帖

 

★ 日日行行 (43)

2016.06.16

紫陽花のブルーがきれいです。激しい先週が終わって、今週は少しなだらかかな。火曜に、久しぶりにフランス大使公邸に行って、日仏翻訳文学賞の授賞式(小西国際交流財団)に参列したくらい。とはいえ、明日は、また数学者の友人・岡本和夫さんと本郷で小さな対談をしなければならないことになっていますけど。

 先週忙しかったのは、「未来」の連載原稿を書いていたからですが、対象は、1970年の吉増剛造さんの詩集『黄金詩篇』でした。このタイトルはネルヴァルの同名の詩Vers dorésから来ているのですが、そのネルヴァルの詩に少し心動かされて、昨日は、青学の研究室から、ネルヴァル全集VIを持って帰ってきた。そういえば、この巻の月報に、わたしは文章を書いていて、それを読みなおしながら、「火」についての自分の思考を思い出したりした。もう一冊手にとったのは、ボルヘスの『闇と讃えて』でしたが、そこに添えられた論文のなかにもネルヴァルの「オーレリア」が出てきて、その一致の暗合に、なんとなく今後の方向性のひとつのシーニュを読みとったりもしました。〈火〉そして〈夜(闇)〉ーー夏至に向かういまの「時」の傾きとしては悪くないかな。たしかにある意味では、《詩》という「行為」がふたたびーーというのは、40年以上の空白を置いてーー戻ってくるような感覚が、最近は、少しありますね。わたしもわたし自身の「黄金詩篇」をスケッチしてみたいですね。もはや「疾走」の行為ではなく、むしろ「無走=夢想」の行為としてですが。


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