破急風光帖

 

★ 風光三昧(5)

2015.06.26

★ 今週23日24日と山形へ。生まれてはじめてでしたが、まさに「山山」に囲まれた穏やかな風光、緑の大地に心あらわれました。東北芸術工科大学への訪問です。40年来の友人の染織アーティスト辻けいさんのお招きで、学生たちを前にして短い講演と対話。わたしの近著の『君自身の哲学へ』から出発してそれを「芸術論」へと展開したかたちになりました。

 講演のあと、ひとりわたしの本をもってサインを求めてきてくれた女子学生がいて、彼女と「無であること」について難しい応答をしたのが、なかなか印象的でした。

★翌日は、けいさんとともに、河北町にある紅花資料館へ。じつは、今回の旅のもうひとつの目的は紅花と出会うこと。この花は、夏至から11日目だったか、半夏生のときに、その畑の紅花が一輪、まるでマニフェストのように咲くものなのだそうですが、わたしが山形に来た23日の朝、東北芸術工科大学の紅花畑では、一論、咲いたのです。なんでも自分に都合よく解釈するわたしは、もちろん、これはわたしを歓迎するために、ちょっと前倒しで咲いてくれたのだ、と勝手に感動。

 12月に東北芸術工科大学で「紅花ルネッサンス」というイベントが行われるのですが、今年、そのときに、なにかわたしなりの紅花へのポエジーをもって参加できないか、考えました。どういうわけか、それが帰りの新幹線のなかでは、「最上紅花」というタイトルの謡曲仕立てとなったのにはわれながらびっくりですが、大学の正面に広がる水の上にたつ立派な能舞台を見たせいかもしれません。ともかく、資料館でもとめた(温室栽培の)紅花の大きな束をかかえて帰ってきました。

 この黄色の、刺立つ花が、闇のなかであやしく光る紅となる不思議ーーー色の秘密に魅せられた旅でした。


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