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【報告】Yoriko OTOMOさん講義

2008.05.29 「アカデミック・イングリッシュ」セミナー

 国際法の基礎とはなにか.現存のそれはほんとうに正当なものなのか.正当でないとしたら,国際法の基礎としてどのようなものが望ましいのか.

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 というようなことを考えさせられた去る2008年5月15日,「共生のための国際哲学」プログラムの開講科目「共生のためのリテラシー実験実習 I」(担当: 高田康成先生)の一環として,Yoriko OTOMOさんによる講義が行われました.Yoriko OTOMOさんはオーストラリアのメルボルン大学法科大学院「国際法と人文学のための研究所」(IILAH)に所属するポスドク研究者です⇒メルボルン大学IILAHのページ.彼女の専門は国際法とジェンダー論.現在 "Decision-Making in International Law: Towards an Ethics of Occupation and Exchange" というタイトルで博士論文を執筆しているそうです.

 今回UTCPで開催された講義 「Searching for Virtue in International Law」 は国際法の根拠をジェンダー論の観点から捉えなおす,というものでした.内容をもっと詳しくお伝えしたいのですが,今年,スペインのOñati International Institute for the Sociology of Lawから刊行される予定の論文のドラフトということですので,それは控えたいとおもいます.

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 とはいえ,許される部分についてひと言だけ.

 OTOMOさんは講演に先駆けて,ご自身の研究方法の特徴をUTCPの活動にひきつけて説明してくださいました.UTCPでは現在,羽田正副リーダーを中心に中期教育プログラム「世俗化・宗教・国家」を実施しています.このプログラムは「共生」とは何か,ということについて正面から向き合うプログラムですが,OTOMOさんも「共生」というテーマに深く関心を寄せておられるとのことでした.このようにUTCPとOTOMOさんはいわば同じの課題を共有しているわけですが,しかしながら,方法論という点でOTOMOさんはオリジナルの(すなわちUTCPとは異なった)アプローチを採ります.OTOTMOさんが採用する研究方法は「世俗化・宗教・国家」における三者の関係は,国ごと(Country-by-Country)に論じるよりも(UTCPのアプローチはこちらである,というのがOTOMOさんの見解です),国際法という観点から横断的(Cross-Cutting)に論じるというものです.

 反省をこめて言うと,わたしは「共生」にたいするアプローチとして国際法,ジェンダー論という分野にはこれまでまったく関心を払ってきませんでした.しかしながら,今後「共生」について理解を深めていくためには,「共生」への多様なアプローチをフォローしなければならないでしょう.今回のOTOMOさんの講演は私にそういうことを教えてくれました.

中澤栄輔

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