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【報告】 Jonathan Cohen氏講演会

2007.11.01 セミナー・講演会

アメリカ、カリフォルニア大学(サンディエゴ校)のJonathan Cohen准教授による連続講演会(全4回)「The Red and The Real: Lectures on Color Ontology」が開催されました.

第1回目 2007年10月30日
The Red and the Real, I
Color: An Introduction to the Geography

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「色とはどんな性質でしょうか?」 という問いからCohen氏の講義が始まりました.
色は「xはaの妹である」といったような関係的性質でしょうか?
それとも,
色は「xは立方体である」といったような非関係的性質でしょうか?
Cohen氏は「色は関係的性質だ」と主張します.これを色についての関係主義と呼びます.
今回,第1回目の講義で論じられたのは,さまざまな「主義」のなかの関係主義の位置づけ,つまり,色の哲学の鳥瞰的な見取り図でした.

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第2回目 2007年10月31日
The Red and the Real, II
From Perceptual Variation to Color Relationalism

本日の講義は色にかんする関係主義の敷衍でした.
「xは主体Sにとって条件Cのもとで赤い」.
Cohen氏によると「赤い」という性質は「観察者=主体S」と「条件C」と「対象x」の相互関係によって成り立っているような性質です.
本日もCohen氏は身振り手振りを交え,熱心に講義を行ってくださいました.

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第3回目 2007年11月1日
The Red and the Real, III
Relationalism and Color Phenomenology

本日の講演では、昨日に引き続き、Cohen氏の支持する関係主義を擁護する諸議論が展開されました。
関係主義に対しては、「われわれが対象を知覚するとき、それはモナディックな性質として、非関係的に表象されているのではないか?」や「関係主義が正しいとすれば、色の定義は悪しき無限後退に陥るのではないか?」などといった問題点が提起されています。
Cohen氏はこうした問題点を四つ取り上げ、それらに対して「われわれは複数の経験を比較するときに初めて、それが関係的であるか否かを問うことができる」や「確かに後退は生じるがこれは悪性のものではない。われわれは直示等々を援用することでこの後退を破ることができる」など、次々と鮮やかな回答を披歴されました。

第4回目 2007年11月2日
The Red and the Real, IV
Which Relationalism?

最終回となった今回の講義で,Cohen氏が強調したのが「役割機能主義」です.

これまでの講義のなかで,Cohen氏は色について関係主義を採ることを主張していました.
今回はさらに踏み込んで, 「関係主義は関係主義でもどういった関係主義か?」 が主題となりました.

そこでCohen氏が主張するのが役割機能主義です.
役割機能主義は傾向性主義とある意味で似ていますが,
傾向性主義のもついくつかの難点 (色の反実在論への対処など)を克服しているとCohen氏は主張します.

ここでCohen氏のテクニカルな議論を負うことはできませんが,
おおざっぱに役割機能主義を説明します.
役割機能主義によると,ある条件におけるある主体にとっての(たとえば赤)色は機能的・多元的に実現されうる性質であり,その赤色の担い手をその条件におけるその主体にとって赤く見えやすくさせるようにするような性質です.

こうした役割機能主義が傾向性主義とほんとうにどこが違うのか,必ずしも私(中澤)の理解は十分とは言えません.
役割機能主義を理解するためには色の哲学をしっかりと振り返り,傾向性主義や関係主義について自分自身の考察を深める必要がありそうです.
Cohen氏は熱意あふれるレクチャーとともに,私(中澤)に宿題を与えていったようです.

【報告】第一回、第二回、第四回:中澤栄輔、第三回:小口峰樹

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