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Title:

世界の中に人を位置づける―人についての四次元主義的捉え方に対する批判的検討―

終了しました
Date:
2008年5月24日 (土) 14:00-16:00
Place:
東京大学駒場キャンパス101号館2階 研修室 [地図]

講師: 鈴木生郎 (慶応大学大学院)

(入場無料 事前予約不要)

 今回の研究会では慶応大学の鈴木生郎さんに「人」の存在論について講演をしていただきます。鈴木生郎さんの専門は現代分析系の形而上学であり、セオドア・サイダー著 『四次元主義の哲学―持続と時間の存在論』春秋社、の訳者のひとりでもあります。
 短期教育プログラム「エンハンスメントの哲学と倫理」が本質的に「人」にかかわっているとするならば、「人とは何か」という存在論的問いを深めていくことは非常に重要であると考え、今回の講演会開催の運びとなりました。
 皆様のご参加をお待ちいたします。

【講演概要】
 私たちがみな人(person)であるということは、私たちが日常的に信じるごく当たり前の事実である。しかし一方で、そもそも人がどういった存在者なのか、世界に存在する他の様々なもののうちで人がどのような位置を占めるのかは必ずしも明らかではない。人の存在論とは、こうした問いに答え、世界の中に人を(つまりは、私たち自身を)適切な仕方で位置づけようとする試みである。本講演の目標は、そうした試みの一つを具体的に評価することであり、それを通じて人についての現代の存在論的探求が何をしようとしているのかを実地で示すことである。

 従来の人についての存在論的探求は、人に対する体系的な存在論的描像を提示するというよりもむしろ、その通時的同一性の問題を極端に強調する形で進められてきた。すなわち、過去や未来の自分と現在の自分とを同じ人たらしめるのはいったいどのような事実なのか、という問いに議論が集中する傾向にあったのである。そして、人の同一性に関する様々な立場のうち、もっとも有力な立場と見なされてきたのが心理説(psychological view)である。心理説によれば、過去や未来の自分と現在の自分とを同じ人たらしめるのは、私たち人がもつ記憶や意図のような心理的な結びつきに他ならない。

 心理説は、こうした主張をすることで、単なる動物や物体とは区別された人の独自なあり方をうまく捉えるように見える。しかし、この見解は逆に、人についての適切な存在論を構築しようとする観点からの厳しい批判を招いてきた。例えば、「人は物質のみから成る物質的対象である」というごく自然に見える仮定に反するのではないかという疑念(J・J・トムソン、P・ヴァン・インワーゲン)や、「人が存在する場所にそれとは区別される動物が重なり合って存在し、それぞれが別個の心的活動を行っている」という信じがたい存在論的描像を導くという批判(E・オルソン)に晒されてきたのである。

 こうした批判を回避し、心理説の正しさを認めつつも人を整合的に世界の中に位置づけることを可能にする試みとして本講演で取り上げるのが、四次元主義(four-dimensionalism)と呼ばれる立場である。四次元主義によれば、人を含めすべての物質的対象は、単に空間のみならず時間的な延長をもつ「時空ワーム」として捉え直されることになる。本講演では、この極めて体系的な存在論的描像が、上記の批判に答えることに本当に成功しているのかを批判的に検討することを目指す。さらに、時間が許すならば、四次元主義がうまくいかない場合に私たちが選びうる選択肢についても紹介していきたい。

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080524_Suzuki_Poster.jpg

ポスターをダウンロード (PDF, 1.05MB)



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