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【報告】 2016年度 駒場祭「こまば哲学カフェ」[1/3]——(1)初日編

2017.03.09 梶谷真司, 李範根, Philosophy for Everyone

2016年11月25日(金)から27日(日)まで、第66期 駒場祭が東京大学駒場キャンパスにて開催されました。

今年もP4E研究会のメンバーを中心に「こまば哲学カフェ」を企画しました。以下では、その3日間の模様をご報告いたします。今回は、第1回目として、初日の様子をお伝えします[1/3]が、その前に、それぞれの企画について簡略に紹介いたします。

❋2016年度の「こまば哲学カフェ」は、次のような企画で構成されました。

◎◎プログラム◎◎
11月25日 金曜日
9:00-10:00 せっかくコミュニティーボールを作るんだから、キレイに作ろう。その2
         企画:山村 洋
10:00-12:00 対話って、言葉だけのもの?音楽療法やサウンドスケープの視点から
         企画:山村 洋・三宅博子 協力:芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト
13:00-15:00 五感プチ対話集 ~feel x play x talk~
         企画:豊 昌樹
15:30-17:30 てつがくたいわ、おもちゃのチャチャチャ ~おもちゃは誰のもの?~
         企画:南島かりん

11月26日 土曜日
10:00-12:00 どうする?! 子どもの英語教育 ~親はなぜ子どもの英語教育に不安を感じるのか?~
         企画:はなこ哲学カフェ いどばたのいどほり
13:00-15:00 受けたかった教育 ※対象:学生オンリー(中学生、高校生歓迎)
         企画:インカレ学生哲学カフェサークル Onecafe
15:30-17:30  sing! sing! think! 歌をテーマに哲学対話/『花は咲く』
         企画:小林大輝・佐藤あおい

11月27日 日曜日
10:00-12:00 短歌 x 哲学対話
         企画:廣川千瑛・堀 静香
12:30-14:30 出張!!SPA 第2弾
         企画:St.paul’s Agora(立教大学)
15:00-17:00 終わりの哲学対話
         企画:角田将太郎

以下、初日の様子をそれぞれの企画の企画者あるいは参加者の方にご報告いただきます。

・プロローグ: 9:00-10:00 せっかくコミュニティーボールを作るんだから、キレイに作ろう。その2
(企画:山村 洋)
 
このコミュニティーボールを作るセッションは昨年に続いて二度目で、前回は数種類の毛糸をまんべんなく混ざり合わせた、きれいな球形の物を作るための理論を説明し、実際に参加者に作ってもらいました。

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きれいな球形にするには、最後に切りはなした時の毛糸の長さを、できるだけ均等な長さにすることと、適切な密度があることが大切で、これには初歩的な算数の知識が役に立ちます。

今回も、初日の朝にコミュニティーボールを作ろうという話になり、どうせ作るなら昨年と同じ内容だと面白くないので、意識的に配色を施した物を作る方法を二種類考え、昨年と同じく、作り方と、その理論を説明してから、参加者に作ってもらいました。

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ひとつは木星の模様のように緯度方向にグラデーションが出来るもの、もうひとつは地球の北半球と南半球のように球形を二分割するものです。

特にデザインとして星にこだわっていたわけではありませんが、基本的な哲学対話で作るコミュニティーボールの制作手順を、あまり逸脱したくなかったので、今回のアイデアに行き着きました。

具体的な方法としては、前者は赤道から極点に向かうグラデーションが、そのまま毛糸を巻く順序になるので、その毛糸の配色を事前に考えて、均等な層になるように巻くこと、後者は単純に左右振り分けて毛糸を巻くことです。

まんべんなく混ぜ合わせることに比べて、技術的には少し難しいですけど、理屈としてそれだけです。

昨年のものよりも工程が複雑だったこともあって、前者のものが時間内に間に合わず、昼休みに完成させる結果になりましたが、配色の方法としては、両方とも成功だったと思います。

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自分としては、「理論が正しいものは、結果的に上手くいく」ことを再確認した自画自賛の時間でしたが、コミュニティーボールの配色のアイデアは、多分これでネタ切れになりそうです。

・企画①:10:00-12:00 対話って、言葉だけのもの?音楽療法やサウンドスケープの視点から
(企画:山村 洋・三宅博子 協力:芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト)

「哲学って、あらゆる料理に使えて、食生活を豊かにするけど、それ自体に飢えた人を救う主食にはなれない、塩コショウのようなものだ」。

このように考えるようになって、「じゃあ、哲学にはあまり関心はないけど、哲学と親和性の良いと思える分野の人を巻き込んでみよう」と、内容を全く決めないままセッションの枠を押さえたことが、今回の企画の始まりでした。

哲学が塩コショウだとすると、どんな分野の人でも、誰でもいいことにもなりますが、実際に一緒に企画してもらうとなると、それなりに手間も時間もかかるし、全く哲学対話に関心のない人に企画者になってもらうのは、やはり不可能です。

また、イベントとして面白みがあり、企画する人にも得るものがある、ということも条件として考えました。

そこで、かつて他のUTCPのワークショップでも同席したこともあり、音楽療法の世界で活躍されている三宅博子さんに企画を持ちかけたところ、幸い承諾していただけたので、内容の詳細が未定のまま、とりあえずスタートすることに。

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自分自身、音楽療法というものは知っていましたが、内容を詳しく分かってるわけではなく、どういう内容なのかを教えてもらうことを含めて、事前に打ち合わせをした結果、タイトルにあるように「対話って、言葉だけのもの?」というテーマが浮かびました。

対話の場では、結果的に言葉を交わすことになりますが、音を理解する前と理解した後の違いや、背景に音があるかないか、そういう言葉以外の意識の変化にフォーカスが当たることを意図し、今回の企画になりました。

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セッションは、導入として参加者に「これまでに印象に残った音について」、一人ずつ話をしてもらい、音を感じるワークショップ、その後、それぞれの話の流れに合わせて音を奏でてもらいながら対話、最後に全体の振り返り、という内容でした。

途中にワークショップを入れたこともあり、対話の時間が細分化され、本来は二時間の枠では収まらないとも思い、スケジュールを単純化することも検討しましたが、残りの対話は、各自持ち帰って考えてもらえば良いと、最初の計画通りのスケジュールにしました。

イベントの日時が平日の午前中だったので、当初どれだけの人が参加してくれるのか想像ができませんでしたが、予想以上に沢山の参加者とともに、言葉だけによる哲学対話とは少し違う目線から、対話とは何かについて考えるきっかけになりえる、面白いセッションになったと思います。

また、今回の音楽と哲学対話の他にも、様々な分野と哲学対話との展開が広がっていけば良いと思っています。

(報告:山村 洋)

・企画②:13:00-15:00 五感プチ対話集 ~feel x play x talk~

(企画:豊 昌樹)

■ 過去二年の「こまば哲学カフェ」から、
・平日は参加者が少ない
・初めて哲学対話(哲学カフェ)に参加する人にとっては2時間は長い
・途中参加が難しい

等を考慮して、20~30分でテーマを区切った対話集を考えました。

■ 哲学対話(哲学カフェ)に関心を持てない人の声をひろってみて、
・哲学の知識がある人や頭が良い人が「参加者」
・無知さを晒したくない(←知識自慢じゃないですよ、と一応説明)
・議論は苦手(←議論じゃないですよ、無理に発言しなくてもいいですよ、途中退席も自由ですよ、と一応説明)

等から… 対話重視よりも「五感」を楽しむ過程で自然に発せられた言葉から問いが生まれて対話に至ればよしとし、無理に対話の「型」にならなくてもいいことにしました。

「五感」といっても「知覚」や「認知」を専門的に説明するのではなく、ごくごく単純に「音を聴いたり」「物を触ったり」「身体を動かしたり」をたのしむことにしました。参加者数に応じたアドリブ進行のため、インプロとアート活動に慣れたゲストと一緒に進行をすることにしました。ちゃんとした哲学対話(哲学カフェ)は他の8つのセッションにお任せして、バカバカしさやくだらなさを気軽にたのしむことを目標としました。ひとつひとつの企画意図を意味ありげに参加者に説明しないことも決めていました。

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■用意した小道具
モスキート音/効果音集、トリックアート映像、アイマスク、匂い用のお菓子/香水、アルファベット型のおもちゃ、折り紙、トランプ、等
■用意した企画
インプロ/マネキンチャレンジ/パントマイム、絵しりとり、視線のパス、筆談、等

当日の参加者は20名ほど。参加者はひとつ前のセッションから引き続き残られた人が参加。途中参加2名。進行予定のゲストが当日に急遽参加できず、どっちみちのアドリブ進行!!

参加者には事前に「このセッションはマジメに対話というよりもくだらなさを気軽にたのしみます」とアナウンス。だらだらと雑談のまま開始。
・モスキート音(20代・30代・40代~で聴こえる領域が違うとされる周波数を聴き比べ)・1枚の折り紙をひとりが1回折ってとなりの人に渡し、その折り紙をまた1回折ってはとなりの人に渡すことを一周
・1枚の折り紙をひとりが1~2回折ってとなりの人にまわしつつ、「生き物」を完成させる

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・アイマスク着用と着用後での対話
それぞれ終始雑談をしながら対話へ移行して終了時間になりました。

モスキート音で「聴こえる」「聴こえない」という個人差が参加者同士でハッキリと別れ、「本当に聴こえているの?」と驚きあう聴こえない側の人たち。日常で気づかないうちに感覚の個人差があることや「老い」に対する「問い」として展開しました。問いの中で「恋する感覚は何歳までどのように変化する部分と変化しない部分があるのか?」に対して60代の参加者の発言に問いが集中して関心をひきました。

インプロ等が実践できず進行は反省だらけでしたが、参加された方々の貴重なお時間をいただいたことに大変感謝しています。

(報告:豊 昌樹)


・企画③:15:30-17:30 てつがくたいわ、おもちゃのチャチャチャ ~おもちゃは誰のもの?~

(企画:南島かりん)
 
かねてよりこどもに関心を持っていた私は、誰しもこどもの時に遊んだおもちゃにもう一度まなざしを向けてなにか考え事をしてみたい、とこの度おもちゃをテーマに哲学対話を企画させていただきました。

当日は年齢性別さまざまな16名の方が集まってくださりました。机の上におもちゃを並べ、手にとって遊んだあと、それぞれ気になるおもちゃや、おもちゃにまつわる思い出を話しました。

「なぜ最初に興味を持つおもちゃが人によって違うの?」「どうして男の子用と女の子用のおもちゃがあるの?」「なぜおもちゃを欲しがるの?」など多くの問いを出していただき、参加者のみなさんと話し合って「そもそもおもちゃとはなにか?」という問いを考えていくことになりました。

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おもちゃはいろいろなことをこどもに教えてくれます。頭を使うたのしさに、ものを大切にするこころ、体を動かすよろこび、、、ではおもちゃがこどもに教えられないことはなんでしょう?

対話の終盤、「おもちゃは私たちに死を教えてくれるのだろうか?」という疑問の中心となったのは机の上のちいさなうさぎのぬいぐるみでした。

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「ほんもののうさぎは死ぬけれど、ぬいぐるみは死なないよね」「死にはしないけれど壊れはするなぁ」「壊れることと死ぬことって違うのかな?」といのちとものの狭間に迫るような、静かながら熱のある対話が繰り広げられました。当初予想していたこどもに関する話題を飛び越えて、うさぎを中心にぐるぐると遠心力で対話の世界をかたちづくっていくようでした。

進行においてはUTCPの皆様に引っ張っていただいた場面も多くあり、自分の未熟さを痛感いたしましたが、終始参加者全員でひとつになって話をすることができ、多くの人と出会い意見を交換する時間を作ることができたように思います。

このような素敵な機会をいただけましたこと、深く御礼申し上げます。

(報告:南島かりん)

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