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【報告】学際的国際会議 “The Enlightenment from a Non-Western Perspective”

2016.06.14 川村覚文

去る5月23日から26日までの4日間、ブルガリアはソフィアにあるソフィア大学にて、学際的国際会議 “The Enlightenment from a Non-Western Perspective”(非西洋的展望からの啓蒙主義)が開催された。

本国際会議はメキシコのグアナファト大学、ウクライナのキエフ・モヒーラ・アカデミー国立大学、トルコのビルギ大学、UTCP、そしてソフィア大学による共催であり、UTCPよりは川村覚文が参加した。

啓蒙、そして近代の問題をどのように捉えるのか。本会議が提起するものは大変大きな問いである。近代において東・中欧、ラテンアメリカ、そして東アジアといった諸地域は、西洋世界からその外部として認識され、眼差される客体として認識されてきた。そのため、自らを主体化すべく近代化と啓蒙の理念を受容するというのが、これら諸地域に住まう人々による西洋への対抗的な試みであった。この近代化がそれぞれの諸地域でどのように遂行され、どのような影響を生み出しているのか。このことに関する批判的な発表と討議こそが、本国際会議の趣旨であり、また実際に行なわれた内容でもあった。

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近代化と啓蒙の問題を問うことは、東アジアの文脈においては、特に近代植民地帝国として日本の問題を問うことになるだろう。帝国日本の出現こそ、近代化と啓蒙の持つ両義性が、暴力的に体現された結果なのではないだろうか。天賦人権説やデモクラシーといった革新的・解放的思潮や思想が紹介された一方で、国民や植民地帝国といった原理が国家の統治とその目標を正当化するものとして導入され、広く東アジア一帯に甚大な影響をおよぼすことになった。その一つの帰結として、「近代の超克」といった理念まで登場し、アジア太平洋戦争の惨禍に影響を及ぼしたと言えよう。

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本会議においては、このような日本と東アジア的文脈における啓蒙と近代化の意味について、まず23日の午前中に行なわれたオープニングセッションにおいて、概観的に述べた。そして、24日の午後に設定されたセッション“Debates and Case studies”においては、“The Principle of Medium: Kyoto School and the Wartime Ideology of Overcoming Modernity”と題した発表を行った。ここでは、京都学派による「近代の超克」や「世界新秩序」などの議論を追うことで、啓蒙と近代化の問題について、より詳しく発表した。フロアからも様々な質問やコメントがあり、中でも大変興味深かったのが、革命以前のロシア帝国においても、ロシアを世界史の最先端に置くような議論が、ヘーゲルを参照しつつなされていたというコメントであった。このような近代における同時代性を、まさに非西洋世界における議論を射程に入れつつ、今後も検討していきたい。

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最後に、本会議開催にあたって様々な便宜をはかってくださったソフィア大学のMonika Vakarelova氏、また開催校責任者のAlexander Kiossev氏に感謝申し上げる。

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