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時の彩り(ラスト・ラン) 161

2014.06.09 小林康夫

★梅雨に入りましたね。火曜の授業のあとに新幹線で大阪へ。翌水曜にまる1日かけてある財団の奨学金の面接をしていました。前の週は東京で2日間面接だったのですが。毎年、この時期の恒例の仕事(もう14年もやっています)。わたしにとっては、全国のいろいろな大学のいろいろな分野の学生・院生・留学生の生活実態に触れるいい機会。でも、このところ毎年、日本の学生たちが、現実的な、あまりに現実的な狭い小さな安定性(資格とか、地元の役所とか)に目標をおいて、自分についても社会についても大きな視野をもてないで自足(自閉?)していることが心配というか、かなしいというか。生きる意欲が小さく縮こまっているような気がしますね。それは、同時に、この国の「未来」が縮こまっているということを意味するのではないかなあ。


★月曜はエリーズ・ドムナックさんの講演会。そっと見守るつもりでいたのに、講演の最後は、————なんという気遣いでしょう————わたしのテクストの引用というか、わたしへの問いで締められたので、こちらも応答しないわけにはいかず、久しぶりに英語をつかってのコメント。カタストロフィーから出発して、それを眼前にして、どのように「アート」が、「祈り」が可能か、という難問にしどろもどろの(?)反応したかな。講演会のあとも、来てくださったドミニック・レステルさん、司会のマークさんはじめ、みなさんと白ワインを1本あけて会話を続けました。

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★土曜は、NHKの「Cool Japan」の収録。1年に数回出演してますが、これもすでに9年目。知人のプロデューサーに頼まれてパイロット版の番組に出演したことが契機で、以来、数名いるコメンテーター陣のひとりです。世界140の国と地域で放送されている番組。かつてブエノス・アイレスのある店で日本人の店員さんから「あなたは・・・でしょう」と言われた驚きをいまでも覚えています。今回は、244回目で「郷土芸能」がテーマでした。(放送日は、BSで8月10日です)。なぜか、はじめてジーンズをはいて出てみました・・・!


★でも、わたしにとっての先週の最大のテーマは、雑誌『未來』(未來社)に毎月連載している『肉体の暗き運命(1945-1970)』の原稿を書くこと。三島由紀夫の『金閣寺』から安部公房の『砂の女』へのシフトをどう演出するか、なかなか悩ましいところでした。大阪行きの車中で『砂の女』を読み返し、木金と少しずつ書き継いでNHKに行く前になんとか脱稿。短い分量とはいえ、毎月新しいことを書くのは苦しいときもある。これも2007年からだから、もう7年間休みなく続いている。若いときの輝かしいような才能の発露には一回性も意味があるだろうが、わたしのような年老いた非才弱才浅才にはマットな「持続」だけが唯一の方法。それも数年という単位で「行為」するのでなければならない。そうしてはじめて、ほんのわずかなにかが得られる。「行為」の結果ではなくて、「行為」をやったことにおいて、形にはならないが、わずかに、苦く甘く、そう、経験の澄んだ上澄みのようなものが得られる・・・ような気がします(なぜかメープル・シロップのメタファーが頭に浮かびますけど・・・?)。(UTCPだってはや、なんと13年だものね!・・・ああ!)

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