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時の彩り(ラスト・ラン) 160

2014.06.02 小林康夫

★ 前回予告したとおり、大学関係では、今学期唯一の「ふつう」の週。珍しく「材料」がありません。なので、授業のことに少し触れると、金曜Ⅲ限の学部後期課程向けの「Explication de texte」の授業。学生の発表の題材がなぜか、ジュネの「女中たち」とイオネスコの「禿の女歌手」でした。不思議ですね。まるでわたしが学生だったときの感覚。実際、ジュネのテクストは渡邊守章先生のゼミでフランス語を読んだものなあ、となつかしく思いだしました。それに大学の演劇サークルではイオネスコが全盛期でしたね。たまたま火曜Ⅴ限の大学院でも、サルトルのジュネ論を出発点にして、ジュネやジャコメッティの問題を扱っていることもあって、時代はいま、「実存」へ、なのかもしれないと思ったり。ともかく、多少は意図的な仕掛けでもあるのだけど、時代の回転扉がまわって、自分の知的キャリアの出発の位相に戻ったようなところもある。ジュネもイオネスコも、その後もテクストが頭から消えてくれないので、少し考えたりしています。おもしろいね。その流れもあるのか、日曜日、銀座で、ニューヨークの画廊のパーティがあったのだけど、そこに行く前に、池袋の東京芸術劇場に寄って「アルトー24時」を観てきました。アルトーもまたその時代の象徴ではありました。ほんとうに回転してもとに戻った感覚そのものだったけど、同時に、それに対する距離もまたある、そんな確認をしたかな。少し尾を引きそうです。


★来週は、駒場博物館の展覧会の関連で、11日(水)にル・コルビュジエをめぐって加藤道夫先生の講演会があり、対話者としてわたしも参加します。また、14日(土)には、リトグラフ作家の阿部浩さんをお招きして、リトの魅力をたっぷり語ってもらう講演会を開催します。アートを研究していながら、リトが具体的にどうやってつくられるのか知らないという人だって多いはず。でも、なんでも現場を知らなければなりません。多数、お出でくださいね。

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