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時の彩り(ラスト・ラン) 156

2014.05.07 小林康夫

★先々週は、じつは、もうひとつイベントがありました。IHSの新プロジェクトの開始。土曜(26日)に駒場博物館のセミナー室で、プロジェクト「生命のかたち」のガイダンスを行いました。わたしにとっては、これは、かねてから考えていた理系、とりわけ生命科学/複雑系の先端の知と人文知とのあいだのなんらかの「接触」を試行するものという位置づけです。物理学だってそうだけど、この1世紀のあいだの生命科学の展開はほんとうにすごい。ガイダンスでも問題になりましたけど、その展開はすでに「意識」という領域にまで迫ろうとしています。未来の人文知がこれを知らないふりはできない。大学院のレベルでその相互作用になんらかの一歩を刻みたいという願いこそが、定年直前だと言うのに、この新プログラムにかかわろうとするわたしの動機です。人文知が「人文」という閉塞そのものを打ち破る時だと思うのですけれどね・・・わたし自身は前にも触れたように「カオス的理性」という方向に行きたいのだけど、さあ、どうなるか。


★先週はというと、わたしには海外の友人たちとの再開/食事が際立った出来事だったかな。月曜には、リールの建築学校の教授のカトリーヌ・グルーさん、金曜には、ベルリンのマックス・プランク研究所のトビアス・チェンさんとそれぞれ夕食。カトリーヌさんとは1年ぶり、トビアスさんとは2年ぶりになるか。場所はどちらもわたしが昔からよく知っている下北沢の居酒屋「R」。フランス語での会話だけど、日本酒を前にして、それぞれ現象学から実存主義、日本文学、建築論、風景論、ビオ・テクニック論、新儒教主義、権力構造の国際比較、最近のそれぞれフランス、ドイツの社会情勢、日本社会の変貌など会話は弾む。かれらのどちらも、日本に行こうと思うと、なによりもわたしと「一杯やりながら話しをしよう」と思ってくれるわけだから、ありがたいですね。講演会やシンポジウムという「公式」の場とは別に、こういう友情ベースの交流ができることがほんとうはいちばん大事なのだ。UTCPはその経験をわたしに与えてくれた。これがどれほどわたしの知的な経験を豊かにしてくれたか。次にかれらと話しをするのは、たぶんこの秋、ヨーロッパで。今度は、おいしいワインを前にしてかなあ。


★今週は、「高校生のための金曜特別講座」で、展覧会と関連して「ジャコメッティとパリ」の講座を行います(5月9日(金)17時30分から18号館ホールで)。「高校生のため」で、全国の高校にも映像が配信されているようですが、誰でも入場可能(予約不要)。何を語るか、まだはっきり決めているわけではありませんが、ジャコメッティそしてパリへのわたしのパッションを語ることになるはず。そしてその翌日は、UTCPのキック・オフ・シンポジウムです(当サイトのイベント欄を参照してください)。


★なお、昨年のソフィアのシンポジウムの報告がソフィアの学術新聞の記事になりました。以下の写真がその一面。わたしの基調講演の要約が載っているようなのですが、どれがそれが分かるかしら?

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