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2013年度東京大学-ハワイ大学夏季比較哲学セミナー準備会(1)

2013.06.02 川村覚文, 文景楠, 高山花子, 東西哲学の対話的実践

2013年8月、東京大学はハワイ大学と共同で比較哲学セミナーを開催します。同セミナーの初回は2012年にハワイで開催されましたが、今年は東京大学が主催校となり、ハワイ大学からの教員と学生を受け入れ主に本郷キャンパスにおいてセミナーを行う予定です。このブログでは、その準備会の模様を数回に渡って掲載します。

2012年のセミナーでは東京大学から教員2名と学生7名が参加し、ハワイという非常に恵まれた環境のなかで、三週間に渡って様々なテーマに関して活発に議論しました。特に日本からの参加者にとっては、質疑応答の様子などからアメリカの大学での授業の雰囲気に触れることができたという点で、非常に魅力的な体験でした。今回は日本での開催ということで、最後の週には寺院や日本哲学関連の名所を訪れる旅行も計画されております。セミナーを通して両大学の学生の間で対話が潤滑に行われるよう、準備会では英語で議論することに慣れることをまず目指します。

今年度は、去年度と比べて東京大学からの参加者が増えたため、準備会は二つのグループに分けて開かれました。以下はそれぞれのグループからの報告です。

5月22日(水)

5月22日(水)の準備会では、梶谷真司氏の論文「母乳の自然主義とその歴史的変遷」に関して山口が論文の概略をまとめ、それを踏まえて英語で議論を行った。川村が司会を担当したが、参加者が4名と少数であったこともあり、全員での活発なディスカッションが行われた。

梶谷氏の論文から特に話題となった点は、現代の「母乳の自然主義」は、科学に対抗するためにかえって科学を根拠としなければならないという「自己矛盾」の問題である。ここで批判の矛先を向けられている「科学」とは、特に産業技術を指すのであって、「母乳の自然主義」が正当化の根拠として用いる科学的な手続き一般と同一視はできないのではないかという疑問が出た。これを受けて、自然と科学の対立という構造を前提することの妥当性を検討すべきという指摘があった。これは非常に興味深い点で、梶谷氏が言及する漢方などの問題を含め、現代の科学技術をとりまく多くの議論(人工的な化学製品を忌避する化学物質恐怖症(cheophobia)など)に繋がる視座であると思った。英語での議論は言葉が上手く出ない部分もあったが、夏のセミナーでのディスカッションに向け有意義な準備会となった。

(山口沙絵子)

5月26日(日)

5月26日(日)に行われた準備会は、初対面同士となる参加者もいたため、6名それぞれによる英語での自己紹介によってはじまった。中国美学から言語情報学まで、研究テーマはみな異なったが、関心が重なり合う部分が幾つも見出されたことが印象的だった。

検討論文は梶谷真司氏の「母乳の自然主義とその歴史的変遷」であり、高山が短い報告を、文が司会を担当した。論文においては、江戸時代から戦後に至るまで、母乳に関する「自然」という語の有する意味が複雑に変化していったということが綿密な資料調査をもとに示され、母乳育児を「自然である」として理想化する現代の立場に対しても、そこで「自然」という言葉が有している意味と、そのような発想を成り立たせている社会的背景を検討する必要があるという主張がなされた。

ディスカッションにおいては、「各時代における誰にとって母乳が自然と考えられていたのか」「現代において、なお自然が希求されるのはなぜか」といった論点が提出された。しかし、「自然」という語の定義がディスカッション中においても非常に難しく、とりわけ自らの経験にとって”It was natural”(自然だった)といった風に使う際の「自然」という語の定義の再検討をも絶えず迫られることになり、あまり多くの論点について議論することはできなかった。とはいえ、参加者全員が積極的に発言することができ、今後の準備会の形式についても、たとえば1つのトピックについての時間制限を設けた方がよいのではないかなど検討し合うことができたのは有意義であった。

(高山花子)

第1回の準備会の報告は以上のとおりです。去年度の準備会や現地での様子については、以下のブログを是非ご参照ください。

http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/0620_l1_dialogical_practice_be/
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/0620_l1_dialogical_practice_be/index_en.php

(報告:川村覚文・高山花子・山口沙絵子・文景楠)

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