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【報告】P4C in Hawaii 見学(1)

2013.03.26 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 榊原健太郎, Philosophy for Everyone

3月3日から10日までの一週間、榊原・神戸・崎濱の3名は、ハワイを訪れました。訪問の目的は、「Philosophy for Children in Hawaii」見学と、「Uehiro Conference 2013」参加です。この出張の報告を、数回に分けてブログに掲載します。まず、P4C見学の最初の3日間について、崎濱紗奈がお伝えします。

白状すると、私が今回P4C-Hawaiiを見学することになったいきさつは、全て「なりゆき」であった。見学メンバーに私を加えてくださったのは、梶谷先生である。先生から「崎濱さん、ハワイ行かない?」と言われて二つ返事をしたのは昨年10月頃のことだった。もちろん、P4Cという試みには興味を持っていたが、それほどの熱意があったわけではない。単に、またハワイに行ける、という魅力に負けて「はい」と二つ返事をした次第である。

けれど、月2回のP4E(Philosophy for Everyone)研究会に参加するようになって、日本にも非常に熱心なP4C実践者の方々がいらっしゃることを知り、私のような者が軽い気持ちで行くと言ってしまったことに少し不安を覚えた。おまけに、現地では英語でP4Eについてプレゼンテーションもしなければならないという。加えて滞在後半にはUehiro Conference 2013の発表も控えている。そういうわけで、成田空港の滑走路を走る飛行機の中で、私は大変後悔していた。観光目的でハワイに飛び立つ人々を横目に、私の胃はキリキリ痛み、肩にはずんと重いものがのしかかっていた。「あああ、ハワイ行きたくない・・・」と隣席の神戸さんにつぶやくも空しく、私たち三人を乗せた飛行機は3月3日、ハワイ時間の朝7:00過ぎに、無事ホノルル空港に到着した。

空港には、P4C-HawaiiメンバーのBenjamin Lukeyさん(以下、Benさん)がお迎えに来てくださった。Benさんには、初日のワークショップを皮切りに、学校見学等すべての行程において滞在中大変お世話になった。

【3月3日 ワークショップ@ハワイ大学哲学科ラウンジ】
到着したその日の夕方、哲学科ラウンジにてオープニングのワークショップが行われた。私にとっては初めてのP4C-Hawaii経験である。P4C-Hawaii生みの親であるJackson先生や、現場で活躍するAmber先生、Chad先生に囲まれ私は少し緊張していたが、参加者皆でコミュニティボールを作る段階で気持ちはほぐれた。(※コミュニティボールとは、P4Cで要となるツールの一つ。毛糸を巻いて作るのだが、このボールを作ること自体がコミュニティの形成を助ける)
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<コミュニティボールを作っているところ>

最初に、P4Cの鍵である“Intellectual Safety”という概念を確認し合い、次に紙でできた芯にカラフルな毛糸をゆっくりと巻きながら、各々が「パーフェクトな休日の過ごし方」や「自分の名前にまつわる面白い話」、そして「なぜP4C-Hawaiiにたどりつくことになったか」という質問に順々に応えていく。
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<Intellectual Safety>

質問一つ一つは他愛のないことでも、場を共有することや人の話にゆったりと耳を傾ける行為を通してコミュニティを形成していく、というP4Cの手法を肌で感じた時間だった。
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<完成間近のコミュニティボール>

【3月4日 カイルア高校見学】
4日は、P4Cベテラン校のカイルア高校を訪問した。最初に見学したのは8年生のEthnic Studiesのクラスである。(カイルア高校でP4Cが導入された経緯については以下をご参照ください→ http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2012/09/post-561/ )
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<Teacher of the Yearに選ばれたChad先生の写真>

Amber先生が中心となって作成されたワークシートに基づきながら、Chris McKinney著”The Tatoo”という小説を教材に用いた輪読形式の授業が行われた。
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<教材の小説>

小説はハワイが舞台で、親世代から子世代へ受け継がれる負の遺産(ドラッグ使用や犯罪など)というアクチュアルな問題を扱っており、Jackson先生によれば、これらの問題は参加している生徒たちにとっても決して無縁ではないという。そのせいか、授業は幾分緊張した空気の中で進められた。皆が真剣である、というよりも、問題の核心に触れることを巧妙に避けているように見える、と言えばいいのだろうか。投げやりに頬杖をつく子もいれば、目線を落として落書きをしている子、それからキャンディを投げ始める子、さまざまである。しかし、具体的な問題を各人が提起し話し合う場面では、一見興味がなさそうな素振りを見せていても、互いに相手の意見に耳を傾けていたことが、非常に印象的だった。ずっと黙りこくっていた子も、突然手を挙げて喋り出したりするのである。
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<授業中の様子>

昼食をはさんで、午後は12年生の国語(=英語)と、希望者のみが受講する日本語の授業を見学した。国語の授業の教材はRay Bradbury著 ”Fahrenheit 451”で、授業では課題部分について気になったことを各人が問題提起し、複数出された問題の中から多数決によってその日討議する問題を決めるという形式が採られていた。選ばれた問い「なぜ人は、自分の本当の感情や意見を隠そうとするとき、笑顔を仮面として用いるのか」に対して、「自分が傷つきたくないから」「自分の奥底には触れられたくないから」「笑っていれば元気になるかもしれないから」など、様々な意見が活発に出された。このクラスでは、P4Cの時間自体を楽しんでいる子が多いように見えた。
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<Chad先生に質問する生徒さん>

続く日本語の授業でも同様に、各人が出した数々の疑問の中から、皆が話し合いたいテーマを多数決で決めた。その日は敬語表現について学ぶ回で、「politeなふるまいは、いつでもずっとpoliteなのか」という問題が採択された。授業担当の先生によれば、普段は講義形式で文法や単語を教えるが、文化的な内容を学ぶ回をときどき設定し、その際はP4C形式で授業を行うとのことだった。このクラスも、国語のクラスと同様、コミュニティボールが飛び交う活気あふれる雰囲気が漂っていた。
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<教室を飛び交ったコミュニティボール>

―続く―

(崎濱紗奈)

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