Blog / ブログ

 

【報告】東京大学-ハワイ大学夏季比較思想セミナ―(1)

2012.08.27 梶谷真司, 中島隆博, 文景楠, 高山花子, 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 芮雪, 川瀬和也, 田村未希, 東西哲学の対話的実践

7月30日から8月の17日まで、ハワイ大学マノア校にて東京大学とハワイ大学合同の夏季比較思想セミナーが開かれました。東京大学からは計7名の学生が参加しましたが、渡航や滞在に際して上廣倫理財団そしてハワイ大学から格別のご支援を頂き、非常に恵まれた環境のもとでセミナーに臨むことができました。UTCPのホームページでは、今後数回にわたって学生の視点からセミナーの様子をレポートしてゆきたいと思います。初回はUTCP RAの文が担当し、初日から三日目までのハワイ生活適応とセミナー開始の様子をお伝えします。

7月29日(日):朝の便でハワイに到着し、そのままタクシーに乗り込んでハワイ大学マノア校での滞在先であるリンカーンホールを目指す。諸先生方と再会を果たし、中島隆博先生の滞在先で少し休ませて頂く。

20120827UT-UHReport1.JPG

<三週間お世話になったリンカーンホールのロビー>

リンカーンホールが今回の主な滞在先ではあるが、ここは海外からの様々な研究者を受け入れるための宿泊施設でもあり、全員分の予約はとれず少し離れた都市部の住居に数名が順に滞在することに。初回にそちらに滞在することになった私と川瀬さんはチェックインのために今回我々の受け入れに尽力してくださった石田正人先生とともに車で移動し、その他のメンバーも生活用品を補充するために市内に向かう。素早く手続きを済ませてくださった石田先生と別れ、ワイキキトレードセンターで他のメンバーと待ち合わせる。そのままバス(TheBusという名前のバスで、アメリカ国内でも評価が高いらしい。頻繁に利用したが、日本のバスほど正確無比でないときもあるものの、全体的にとても気持ちよく利用できた)でアラモアナ・ショッピングセンターに向かい、携帯電話の契約を済ませる。三週間とやや長めの滞在だったので、レンタルよりも端末を買ってプリペイドサービスを申し込む人が多かった。端末はもっとも安価なものが20ドルと、日本では考えられない安さ。その後センター内で夕食をいただき、バスで各自住まいに戻る。ほぼ30時間連続で起きていたことになるので、すぐに眠りにつく。


7月30日(月):時差ボケのせいで深く眠れず、4時に目が覚めてしまう。朝ごはんを食べてバス停で7時半のバスに乗る。セミナーは午前9時に始まり午後2時に終わるという時間設定なので、ワイキキからはかなり早めにでる必要があるのだ。8時20分ぐらいに教室に到着し、コーヒーを飲みながらこれから三週間授業を受けることになっている教室を見回す。他の参加者もぽつぽつと入室し始めたので、近くに座った人になんとなく声をかけたりしていた。その時初めて知ったのだが、参加者のなかには東大とハワイ大以外の所からきた人も数人いるらしい。

20120827UT-UHReport3.JPG

<教室の風景>

9時には全員の参加者が揃い、石田先生の司会による紹介セッションが開かれた。講師の先生方と参加者による自己紹介、そして中島先生による比較哲学の導入的講演が主な内容。その後昼ごはんの時間を迎える。キャンパス内にはほとんど外食するところがないため、教室近くでのケータリング・サービスがとてもありがたい。これがなかったら昼休みの間の参加者同士のコミュニケーションはぐっと難しくなっていただろう。初日の昼休みに、私はジョージア州から参加したという分析哲学が専門のGeorge Wrisleyさんとあれこれ話をした。日本や中国の哲学や文学が専門という参加者が多い中、分析哲学が専門という人は彼だけだった。一応所属大学では教員だが、ここでは参加者として同等の立場だからか皆ファーストネームで呼び合う。かなり年の差がある他の参加者ともファーストネームで呼び合う光景は、多少違和感があったものの直に溶け込んでしまった。

20120827UT-UHReport4.JPG

<いつも活発な会話が行われる昼休み>

午後が本格的な授業としては初回で、ロジャー・エイムズ先生の講義を聞く。始まりにふさわしく今後の方向を定め問題を提起してゆく内容で、今の中国がどのような状況に置かれているか、中国哲学をどのように読むべき(かつ、読まないべき)かといった話から始まり、ご自身が長年考え続けていたテーマである儒教の倫理学の解明を、友情を一つのテーマにしながら進めてゆく。多彩な質問と意見をきちんと一つの流れに組み込む力に感銘を受ける。授業が終わった後、ハワイ大の哲学科の学生に哲学科の部屋を案内してもらう。アメリカで比較哲学を重視している数少ない大学らしく、コモンルームには多様な背景をもつ哲学者のイメージが散りばめられている。

20120827UT-UHReport5.JPG

<哲学科のコモンルーム>

その後大学からバスで移動。明らかに寝不足で、バスのなかで幾度も意識を失いそうになった。時差ボケ適応は思ったより大変。


7月31日(火):授業開始までは前日と同じで、早めに起きてバスで大学に向かう。バス内は冷房がかなり効いていて、ちょっと寒いくらい。今日の午前の授業は中島先生の授業で、3.11などを踏まえながら中国哲学が今何を発信できるのかを考えるという明確な問題意識を打ち出した内容だった。昼ご飯を頂いてからは石田先生の授業。今回のセミナーでは西田幾多郎の『善の研究』における純粋経験の理解がテーマとなるが、初回では禅や科学との距離をどのように上手に取りながら西田を読むかを考え、純粋経験の輪郭を聴衆に伝えるという授業が行われた。日本からの学生も積極的に発言をしようと努力するのだが、語学力の問題もあって思い通りには行かず。

日課が終わっても2時なので、先日急遽決まったハワイ大の学生との読書会を前にキャンパス・センター(生協のようなところ)を訪問。その後、哲学科のコモンルームに集まり三木清が健康について書いた文章を読む。この読書会は図らずしも梶谷真司先生のレクチャーの伏線になった。夜はワイキキに向かいセミナーのキーノート・スピーカーとしていらした小林康夫先生を囲む。日本語だけの空間は非常に落ち着くが、セミナーはまだまだ始まったばかり。

20120827UT-UHReport6.JPG

(報告:文景楠)

Recent Entries


  • HOME>
    • ブログ>
      • 【報告】東京大学-ハワイ大学夏季比較思想セミナ―(1)
↑ページの先頭へ