Blog / ブログ

 

時の彩り(つれづれ、草) 139

2011.09.21 小林康夫

みなさん、おひさしぶりです
夏休み1月は東京でほんとうにひさしぶりの静かな日々を送っていたのですが、9月1日からまたしても怒濤の日々。昨日、アイルランド・パリを巡っての旅から帰国したところです。まず、その報告を。

アイルランド報告
今年5月に数回のセミナーを駒場で開いてくださったパークス先生がコーク大学でアイルランドではじめてというThe Institute of Japanese Studiesを創設。その開所セレモニーを兼ねて、日本文化についてのシンポジウムを開くというので、高田先生・中島先生とともに参加。しかもこのシンポジウムには、7月にUTCPで行った日本哲学のSource Book のカスリス先生とハイジック先生も参加というわけで思いもかけず、UTCPコネクションの日本哲学の会にもなりました。

だが、Institute と言っても特別な建物があるわけではなく、パークス先生のオフィスの建物の前に、なんとかれが設計し構築した日本風の枯山水の石庭がその象徴的な「場所」ということになる。コーク大学の学長も参加してのその「庭開き」から長い1日がはじまりました。

110913_Cork_Photo_01.jpg

110913_Cork_Photo_03.jpg

そしてシンポジウムの会場は、これも旅行ガイドブックにも写真つきで登場するコーク大学内にあるHonan Chapel。わたしもいろいろなところで講演をしたことがありますが、ステンドグラスの光が差し込む教会というのははじめて。講演というよりまるでミサのように声が響くのです。

110913_Cork_Photo_04.jpg

冒頭はカスリスさんの「Kokoro」についての講演。われわれが数年前にベルリンでやった会議を思い出しながら聴いてました。その後、ハイジック先生、龍谷大学のヒロタ先生、コーク大のボッキング先生の講演。昼食をはさんで午後のセッションは、ダブリンから駆けつけた渥美・日本大使の挨拶に続いて、われわれ3人の「Aspects of Japanese Culture」。わたしが前振りで「Flower : An Introduction to Japanese Culture」、次が中島さんで「Celtic Spiral Patterns and Japanese Modern Aesthetics」、最後が真打ちで高田さんの「Encounter with the West : Three Types in Modern Japan」。

110913_Cork_Photo_07.jpg

わたしはかつてロレアルから出た「美」の本に書いた原稿をもとに喋ったのだが、中島さんはケルトの装飾模様をアレンジして今回のための力作原稿、最後の高田さんはさすが与えられた時間では三つの事例は語りきれず、当然、半分くらいは原稿をはしょったはず。でも、別に特に相談したわけでもないのに、わたし以外の両名は期せずして岡本太郎をトピックの一つに挙げていたこともあり、手前味噌ながら、縄文から花、そして岡本太郎へ、さらに現代のファッションにまで日本美学のラインを鮮やかに描いて、3人のあいだにきれいにパスが通った感じ。時間がないからゴールまでは行かなかったけど、コンビネーションはよかった。わたし自身は、教会の空間で「ひさかたのひかりのどけき・・・・」と和歌を立ち昇らせたのが、ちょっとおもしろかったですね。

110913_Cork_Photo_05.jpg

110913_Cork_Photo_06.jpg

そのあとは上智大学のオーレリー先生の講演、さらに会場を変えて『KanZeOn』という映画の上映会と続くのでした。夜は大使主催の会食で、これも参加者がみな友人たちということもあって、とても楽しい会になりました。

パークスさんは、ヴァーチャルなこのInstituteを足場にして、日本研究の国際的なネットワークを構築したいという希望を語っていました。ユーラシア大陸の両端のあいだでそのような学術ネットワークが今後、どんどん進化することを願っています。しかしスピードが大事ですね。カスリス先生は来月はまた日本。パークス先生も来年1月に再来日。こうやって世界のいろいろな場所で出会いのセリーを重ねながら、研究交流がほんとうに実質的な肉をともなっていくのを感じます。

そう、世界はすごいスピードで動いています。コーク大学だけではなく、そこに向かう前に、ダブリンのTrinity College のLongRoom研究センターとも2日間にわたって会談と打ち合わせを行いましたが、そこでも研究レベルでの交流を強く求められました。

中島さんと高田さんはコークのあとはオックスフォードに研究交流の打ち合わせに。わたしは単独でパリに向かって、パリ第8大学の先生方と打ち合わせ。10月7日にUTCPで講演をお願いしているクリスタン先生ともお会いして出版もからんだお話をしてきました。

ほかにもいろいろありますが、今回はここまで。というのも、22日は今度は中国の広州へ飛ばなければならないからです。そこでのトリエンナーレのオープニングに合わせたシンポジウムに呼ばれたというわけです。グローバルCOEとしてのUTCPはあと半年ですが、さすがにこの10年間、店を開いてきた効果はようやく実ってきて、あちこちから招聘や講演希望が舞い込むようになっています。あと半年、わたしも忙しい状態が続くことを覚悟しないといけないようです。

Recent Entries


↑ページの先頭へ