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時の彩り(つれづれ、草) 119

2010.11.18 小林康夫

エルサレム・ハイファ報告(2)――一挙に最深部へ

パリから新雪を冠したアルプス、イタリア北部、アテネ、エーゲ海と上空を飛んでテル・アビブ空港に着いたのは、真っ赤な夕陽が差し込む頃。そこからミニバスで標高800メートルだったか、一気にエルサレムへとのぼって行く。旧市街に近いホテルに着いて、近所のYMCA(とはいえ、城砦のような塔をいただく立派なものなのだが)で食事をして、公園から旧市街を望む。あれが城壁、あれがダビデの塔!と眺めているうちに、このままホテルには帰れない、見た以上はこのまま行ってみよう、と長旅の疲れものともせずタクシーに乗り込んだのが3人いて、そのなかにわたしも入っていた。

ジャファ門から旧市街へ。夜10時人気のない迷宮のような石造りの細道をのぼったり降りたり・・・と同行者にささやかな縁がないわけでもない聖マルコ教会に出た。もちろん扉は閉まっている。でも、ちょいと扉を押すと、それが開いて、なかに入ると中庭。建物の上のほうからは教会はしまってるよ、という女の高い声も聞こえてくるのだが、どういうわけか、黒衣の女性がひとり階段を降りてきて、特別に入れてあげると言う。ここは、実は、世界最古の教会で、シリア正教会に属するのだそうだが、イエスの「最後の晩餐」が行われたのは、ガイドブックにのっている場所ではなく、ほんとうはこの(いまでは地下になっている)2階の部屋であったという。この女性、Justinaさんといったが、われわれを案内してくれながら、この場所で彼女自身が体験した「奇蹟」の数々を物語ってくれ、最後には、イエスが喋っていた言葉(アラム語)にもっとも近いシリア語で「主の祈り」を歌ってくれた。わたしはキリスト教徒ではないが、あわせて「アーミン!」(という発音になる)と唱和。この出来事自体が不意打ちのような「奇蹟」でもあって、一挙にエルサレム最深部へと連れ去られた夜でした。エルサレム、夜、石の夜!

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『動物は人間の未来である』という衝撃的なタイトルの本が届きました。

昨年、UTCPでも講演していただいたパリの高等師範学校のDominique Lestelさんが新著を出されました。送っていただきましたので、ご紹介します。とても刺激的でおもしろそう!

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Dominique Lestel, L'animal est l'avenir de l'homme. Fayard, 2010.

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