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時の彩り(つれづれ、草) 117

2010.10.25 小林康夫

秋深く・・・

どうも10月のはじめに約束したわりには、ブログを書くことがストップしていますね。ごめんなさい。そのとき10月6日に書き悩んでいたイスラエルでの講演原稿、出発も近いというのに進んでいない、ということもひとつの原因。エルサレムにまで行って、いわゆる普通の!学術発表をしても仕方がないので、なにか「わたしにとってのエルサレムの意味」を明らかにするような話をしたいのだけど、英語ということもあって、言葉が迸らない。書き悩んでいます。

小説

後期課程の授業のほうは、予定通り「小説」を論じることにして、はじめてみたら、結構、自分のなかに手応えがある。これまでは、なんとなく演習形式の授業にこだわっていたのだけど、この歳になったら、少しはいわゆるマジストラルな講義もいいかな、と思ったりもして。一応、80年代の日本の小説ということで、まずは『夢の島』(日野啓三)を取り上げているけれど、言いたいことがいろいろ出てくるのがおもしろいし、思いがけない発見もあったりして楽しいですね。この夏休みにわたしが読んだ小説は、Kazuo Ishiguro “The Remains of the Day”とPaul Auster “Invisible”の二冊でした。前者は、必要があって、ということもあるが、後者は、オースターの新刊はかならず読むことにしているので、純粋な喜びのためかな。でも、最近の学生のみなさん、あまり小説を読んでいないような気がしますね。あれほど評判になった村上春樹の『1Q84』ですら、教室で訊いてみると、そんなに読まれている形跡がない。文化のなかで小説がもっていた位置というか機能が変わってきている、という歴史的な考察も、まあ、授業のサブ・テーマのひとつです。イスラエルに行く飛行機のなかで、いい小説を読む至福の時がもてるといいのですが、いまのままだと、ラップトップを広げて講演原稿を書き続けることになりそうです。やれやれ。

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