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【UTCP Juventus】岩崎正太

2010.09.25 岩崎正太, UTCP Juventus

【UTCP Juventus】は、UTCP若手研究者の研究プロフィールを連載するシリーズです。ひとりひとりが各自の研究テーマ、いままでの仕事、今後の展開など を自由に綴っていきます。2010年度の第24回はRA研究員の岩崎正太が担当します。

UTCPに所属して2年目になりました。これまでの研究内容につきまして昨年のブログをご覧いただければ幸いです。今回は、詳細な研究紹介というよりは、現在の興味関心について書きたいと思います。

【吃音】
私は、<吃音>という言語現象に興味関心を抱いています。吃音は、発語の際に第一音が円滑に出なかったり、ある音を繰り返したり伸ばしたり、無音が続いたりする現象です。あるいは<どもり>ともいわれるもので、一般的には障碍として認知されていると思われます。
<吃音>という言語現象を扱った国内の作品は、多くはありませんが、いくつかあります。すぐ思いつくところでは、三島由紀夫の『金閣寺』でしょうか。あるいは岩明均の漫画『風子のいる店』や緒方明の映画『吃音少年合唱団』を挙げる方もいらっしゃるかもしれません。ちょい役での登場であれば、村上春樹の『ノルウェイの森』などを思い出されるひともいるでしょう。
現在関心を抱いている小島信夫という作家もまた、「吃音学院」(1953)という短編を書いています。芥川賞候補作品で、かれの初期作品群のなかのひとつです。小島信夫の作品は、喜劇的であると同時にどこか物悲しさを感じさせます。この短編もまた、登場人物たちが吃音という悩みを抱えさせられた運命の物悲しさを感じさせるのですが、けれども、そんな状況のなか、かれらの心理と行動がトラジック・コメディのように展開されています。
この短編のなかで、吃音の起源を問う場面が出てきます。詳しい説明は省きますが、主人公は、吃音を形象化させ、そいつが発語時に邪魔をしているといいます。〈なにものか〉の仕業によってどもってしまうというのです。ことばの傍らに潜伏し、常に機会を窺っている〈なにものか〉。そして、発語する瞬間に茶々をいれてくる〈なにものか〉。主人公は、どもる瞬間に、自己のなかに存在する〈なにものか〉との格闘を孤独のなかで行っているようなのです。
吃音に限らず、ことばを喋る人間そのものについて考えるとき、とても示唆的な物語だと私は思います。ことばを話す動物としての人間の本質に関わるとでもいえるかもしれません。ご興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

【Graduate Student Conference】
現在、私を含めたUTCP若手研究員を主体に、Graduate Student Conference(学生カンファレンス)を開催すべく企画を進めています。博士学生を中心とした英語による国際会議を開催することは、欧米では多く行われているようですが、日本においてはあまり馴染みがないかもしれません。国内外の若手研究者との議論をとおして、学術交流を深める機会としたいと考えています。
発表者は国内外から募集します。近々、本UTCPサイトに応募要項(Call for Papers)が公開される予定です。多くの応募をお待ちしております。

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