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【報告】「近代東アジアのエクリチュールと思考」第4回

2010.06.25 └セミナー, 齋藤希史, 裴寛紋, 近代東アジアのエクリチュールと思考

中期教育プログラム「近代東アジアのエクリチュールと思考」第4回目のセミナーは「日中戦争前後の三国志物語」と題し、発表は箱崎緑さん(比較・修士課程)が、コメントは裴寛紋(比較・博士課程/UTCP RA)が担当しました。
(発表5月7日、討論21日)

発表に関連したテクストは次の通りです.

【テキストⅠ】最上哲夫『三国志物語(世界名編物語叢書)』金蘭社、1926
【テキストⅡ】村上知行『三国志物語』中央公論社、1939
【テキストⅢ】野村愛正『三国志物語(世界名作物語)』大日本雄弁会講談社、1940
【テキストⅣ】野村愛正『三国志物語(少国民名作文庫)』大日本雄弁会講談社、1946

◆発表の部(5月7日)では、日中戦争前後に書かれたそれぞれのテキストの前書きと本文の比較を通じて、『三国志物語』を子どもの中国理解の援けにしようとする言説が、時局とのかかわりの中で浮上した(Ⅲ)と分析された。そのような執筆動機は、同シリーズに収められた他の作品の巻頭言には見られない特殊なものである(Ⅳ)。発表者によると、これは日本における中国文学の受容の問題を考える上で、なかでも『三国志(演義)』受容の特徴として位置づけられる例である、という。

◆討論の部(5月21日)では、まず発表者により、本文の検討、小説の意味付け、中国理解と文学、という3点からの補足があった。

コメントは、主な研究対象が前書きである点、また児童文学シリーズの中に『三国志物語』が数的に少ない点(とくに『西遊記物語』に比べて)などから、方法の有効性を指摘するものであった。その上で当面の考察を発展させるために、三国志受容史(大衆小説向け/子ども向け)の流れにおいて、または児童文学そのものの研究において、もしくは多様なメディアによる再生産において等々、模索可能な方向性を投げかけられた。

また,中国と韓国やベトナムにおける『三国志』の変容、各国の「名作」選定と教養などの問題について議論が続いた。

(文責 裴寛紋)

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