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時の彩り(つれづれ、草) 103

2010.04.21 小林康夫


 アイスランドの火山の爆発のせいで、欧州を中心に飛行機がストップ。今日から再開の動きが出てきたようだが、パリから来るはずのわたしの友人2組も出発延期。今日、東京から帰国予定だった女性研究者のカトリーヌは飛べたのかどうか。オランダで足止めされていたのが、先月UTCPに来てくれたボイヤン・マンチェフ。かれとのメールやりとりで、かれが「この出来事の哲学的な側面に思いを馳せている」という言葉に反応して、こちらもグローバリゼーションに不意打ちをくらわす「灰の逆襲」と応じて、もちろん少しデリダを下敷きにして、応答しあったりした。確かにこの現象には、なにか考えるべきことが潜んでいる。いままでと違った仕方で「自然」について考えることを要請されていると言ったらいいだろうか。


 しかしそれにしても、どこか異常な今年の春だが、UTCPは新しい年度を静かに開始しはじめた。キックオフシンポジウム以来、いくつかの外国の方のレクチャーが行われ、どれもたいへん興味深いものだった。とりわけ、今週のカズデンさんのレクチャーには、柄谷行人さんも聞きに来てくださって、その後の懇親会もつきあってくださった。カズデンさんは柄谷さんの「学生」でもあったそうで、思いがけないつながりにびっくり。久しぶりにお会いできて楽しかったですね。カズデンさんが考えていることは、わたし自身の思考の方向とよく似ていることもあって、とても刺激的でした。どこか相通じることを、離れた人が考えているということのうちに、時代の同時性というものはあって、それを確かめることは人文科学の研究者にとってはとても重要なことなのです。

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