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時の彩り(つれづれ、草) 099

2010.03.11 小林康夫

リール講演

 リールの建築景観学校で講演。これは、実は、十数年来の友人でもあり、共同研究者でもあるカトリーヌ・グルーさんの誘いに応えたもの。かつてトヨタ財団の研究資金をもらって、ストラスブールでの国際会議をはじめとしていろいろな研究者を巻き込んで「風景」をテーマに共同の研究をおこなったことがあった。最近は、わたしはUTCPのせいもあって、そちらの建築・風景・空間にかかわる仕事がまったくできていないが、この機会に少し取り戻そうとパリに行く飛行機のなかでもいろいろ考え、パリに着いてからもメモはとったのだが、ついにきちんとした完成原稿は書けなかった。まあ、いつものことだが、ぶっつけ本番。とはいえ、前日にオデオンのカフェで思いついたアイデアをふくらませることで、わたし自身にも「発見」のある話にはなった。簡単に言えば、現象学的なアプローチを超えて、「歴史の無意識」としての都市を問う「徴候学」へのイントロダクションというわけ。とこう書いてみると、なんだ、UTCPでこの間やっていた「時代と無意識」のプロブレマティックの延長だということが明らかではあるのだが。

早春

 すっかり忘れていたが、3月のはじめは、パリはまだ春には遠い。先週末にこちらに着いて以来、(いつもそうだが!)とびきりの晴天が続いている(南仏は大雪だった)が、しかし寒いこと。でも、リールの講演が終わって、まあ、一息ついた感じ。パリ第8大学の先生方にお会いするなど、いろいろな打ち合わせはまだ残っているが、年度末のこの時期に「句切り」のような束の間の空白が得られたのはありがたい。ちょうど本が一冊出たところでもあるし、この先、どの方向に思考の舵をきるのか、ぼんやり考えてみるにはいい機会かもしれない。昨日、会った写真家のリュシールからカルチエ財団の招待状もらったので、今日の「キタノ・タケシ」展オープニングをのぞいてみようと思っている。

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