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時の彩り(つれづれ、草) 089

2009.12.11 小林康夫

上海

 今月の14日から16日まで上海の復旦大学で、Interrogating History and Modernity in Japan and China というタイトルのもと国際会議が開かれます。これは復旦大学、ゲッティンゲン大学、MEARC(ライデン大学)、そしてわれわれUTCPの共催です。わたしも日曜に出発して参加することになっています。参加メンバーも世界各国から錚々たる顔ぶれ。UTCPをはじめてこの8年間で実感していることですが、世界の人文科学のなかで、日本や中国、広くはアジアのモダニティの問題を問おうという動きは加速していると思います。その動きをフォローして対応する日本国内の拠点が少ないのが実情。UTCPにお声がかかる所以です。

 わたしもだいぶ前から日本の戦後の文化をいくつかの次元で問い直す企画はあって、授業でも少しやってみたことはあるのだが、まだ熟していなくて、1月の北京での講演の準備もあり、今回は、躊躇した末にコメンテーターとチェアにまわることにしました。予定では、二年前にベンヤミンをめぐってシンポジウムを行った華東師範大学の先生方とも今後の研究交流をめぐる打ち合わせの会がもたれます。ともかく、東アジアの大学間の研究交流は急速に深まっています。

パリ第8大学

 で、上海から戻るとすぐに、今後は、駒場でパリ第8大学からの代表団を迎えて「大学における人文科学の未来」についての1日のシンポジウム(12月19日)。グローバリゼーションという世界的な資本主義の運動に巻き込まれて、大学はいま、その存在理由を深く問われています。とりわけ、これまでいわば大学という理念の中核を形成していたとも言うべき人文科学はその危機に直面しています。フランスでは、人文科学の世界的な拠点をつくるというコンドルセ計画もすでに動きはじめており、パリ第8大学はその急先鋒に立っています。今回、パリ第8大学は、学長・パスカル・バンザック先生をはじめとして、われわれにはすでに馴染みの深いピエール・バイヤール教授など6名の代表団を組織して東京大学に来て、われわれと人文科学の運命について討論することになっています。いったい大学はどこに行こうとしているのか、その世界的な動きのなかで、人文科学はどのような連帯を組織するのか――いまこそ、国際的な対話が必要です。年末の忙しいときですが、同時通訳が入りますので、どうぞ多数の皆様のご来場をお願いしたいと思います。(わたしも自分の講演原稿を3日間の上海のシンポジウムの合間に書くことになりそうです。さあ、どうなるか?――毎回、こんなことをやっていますけど。体によくないよなあ……!)

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(1969年生まれ、40歳の若き学長パスカル・バンザック)〔写真・西山雄二〕

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