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【UTCP Juventus】喬志航

2009.08.13 喬志航, UTCP Juventus

2009年のUTCP Juventus、第5回は特任研究員の喬志航が担当する。

 私はひきつづき中国「近代」思想を研究している。19世紀中期の中国においては、近代産業革命による市場拡張の欲望をもった帝国主義諸列強の到来とともに、西洋の「近代」的理念ももたらされることとなった。列強が環視するという厳しい国際環境の中で中国を維持し発展させるためには、「近代化」は中国の知識人たちが自らに課していたもっとも緊急の行動日程であった。政治的立場が異なろうとも、またどの程度そしてどのように思索を展開しようとも、中国「近代」思想の核心部分に深い影響を刻印することとなった一群の中国の思想家には、いずれも資本主義的な近代化に対する共感と抵抗という矛盾が表現されている。近年、とくにその抵抗、つまり、伝統的な中国思想・文化の解釈を通じて西洋とくに西洋近代の諸価値を批判しつつ、超えようとした彼らの仕事は注目され、「反近代性」という範疇を用いて説明される傾向が強い。
 私は、彼らの伝統的な中国思想・文化の解釈によって試みられた近代や資本主義に対する抵抗を、現代からの超歴史的な立場から素朴に賞賛することではなく、その発生と変容の場に差し戻して理解することによって、当時の人々が「近代」をどのように経験し、それをどのように表象したのかを解明していくことを研究の基本としてきた。
 今後、私たちが資本主義的な「近代」から自由になることはありうるのだろうか?ありうるとしたら、どのような方向性のものになるのであろうか?それは現在のところ、世界の知にとってもまったく見えてこないところではある。それにもかかわらず、あるいはだからこそ、「近代」に対して清末民初期の中国知識人が行ったその批判が、その後、現代に至るまでの公理自由平等、主体性や文化的差異に関するあらゆる疑念や強迫観念の正確な前触れであったということに注意すべきである。そうした言説に特徴づけられている今日の歴史的状況に身を置く私たちにとって、彼らの議論の複雑性を見ることは、単なる思想史的整理に止まらぬ今日的な意味を持つだろう。

 喬志航

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