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UTCPイスラーム理解講座第8回“No god but God: the Origins, Evolution, and Future of Islam”

2009.04.06 イスラーム理解講座

 3月16日、第8回イスラーム理解講座が開かれた。今回は東京外国語大学中東イスラーム研究教育プロジェクトとの共催で、著書の邦訳の出版に合わせて来日したレザー・アスランReza Aslan氏(カリフォルニア大学リバーサイド校創作学科助教授)による、“No god but God: the Origins, Evolution, and Future of Islam”と題した講演が行なわれた。

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 氏は、イスラームの成立以来、約1400年にわたってイスラームの解釈を独占してきたウラマー(イスラーム法学者)層の権威が、現在大きく揺らいでいると指摘する。なぜなら20世紀における急速な識字率の向上と教育の普及、様々なメディアを介した外来思想との接触、欧米諸国への大量移住、これらがムスリムたちの間に急速に起きた結果、ウラマー層に属さない人々がイスラームに対する解釈権を徐々に主張するようになったためである。その結果、従来の枠組にとどまらない多様な解釈が登場するようになった。氏は、これをイスラームの権威の個人化(individualization)と呼び、イスラームにおける宗教改革(reformation)であるとも指摘する。

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 このような変化を背景として、伝統的なイスラーム教育を修めることなく独自のイスラーム解釈を展開し、ムスリムの間に広範な影響力を持つ人物が現れるようになる。氏は、その代表的な人物としてウサーマ・ビン・ラーディンやエジプトでTV説教師として有名なアムル・ハーリドなどを取り上げた。ビン・ラーディンについては、特に彼が欧米諸国で生まれ育ち、伝統的なイスラーム教育に不可欠なアラビア語すら解さないために、ウラマー層の提示するイスラーム解釈に満足しないムスリムの若者たちの間で絶大な支持を集めていることに言及した。

 近年、数多くのイスラーム解釈が主にインターネットなどの仮想空間上で発表され、ムスリムの支持を獲得すべく競っているが、氏はそれらの間に起こる競合は、宗教改革のうえでは不可避であると同時に必要なものであり、キリスト教における宗教改革の例を引きつつ、時に暴力的な帰結を伴うものがあるからといって、必ずしも全てが否定的にとらえられるべきではないとする。
 最後に氏は、新たなイスラーム解釈とそれを担う勢力が各国における最近の議会選挙において勢力を伸ばしたにもかかわらず、その結果が現政権や国際社会によって否認されたことを批判し、中東域内における政治的・社会的・宗教的発展を実現させるためには、彼らを実際に各国の政治的プロセスの枠内に取り込むことが重要であると指摘して講演を締めくくった。

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 その後の質疑では、新たなイスラーム解釈がムスリムたちに受容されるさいに、彼らの信仰心はどのように関係しているのか、また新たなイスラーム解釈を提示している人物が数多くいるなかで何故ビン・ラーディンに注目したのかなどについて、氏の考えを問う質問が出されたほか、氏の指摘するようなイスラーム解釈間の競合は、政府が自らにとって望ましいイスラーム解釈を支援しているような多くの中東諸国においては必ずしも自由なものではないのではないかというコメントなどが出された。アスラン氏が今回語った、従来一部のウラマー層によって独占されていたイスラーム解釈権が他にも拡散しているという現状は、以前イスラーム理解講座に登壇していただいたクラーク・B・ロンバルディ氏の提出した論点とも相通じるものであり、現在のイスラーム内部に起きている変化について我々の考察を更に深める貴重な機会となった。

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(文責:勝沼聡)

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