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時の彩り(つれづれ、草) 029

2008.04.17 小林康夫

☆ 金杭さん博論審査

先日、4月12日に1月までUTCP研究員で、現在は韓国・高麗大学の研究員である金杭さんの博士論文審査会があった。

「セキュリティの系譜学:生と死のはざまに見る帝国日本」という力作で、高橋哲哉さん、中島隆博さん、松浦寿輝さん、李孝徳さんらとともに、わたしも審査員。

なにしろ、毎度のこととはいえ、『UP』誌連載に、「思考のパルティータ」連載と原稿を抱えて、しかも新年度のいろいろな準備、さらにはマレーシアからの素敵な老詩人モハンマド・ハジ・サレーさんをお迎えしたりと相変わらずの状態で、丸山真男から石川啄木、美濃部達吉、戸坂潤、南原繁、竹内好、小林秀雄を、国家とセキュリティの観点から論じつくそうとする大論文とつきあうのはなかなかたいへんだった。

でも、それだけにこちらにもいろいろ収穫はあって、あらためて国家と共同体の問題を考えたりした。その一端は、さっそく「思考のパルティータ」(8)に書かせてもらったが、坂口安吾の『白痴』という、金杭さんが論文の冒頭にまるでエピグラフあるいはエンブレムのように召喚したテクストに対するわたしなりの読解を記述したというわけ。

はからずも、今日からはじまる今学期のわたしの授業「時代と無意識」へのある種のプレリュードになったようにも思う。いずれにせよ、この博論審査、まさにUTCPのこれまでの活動のひとつの結実であったと思う。


☆ ご案内(4月19日、ICC)

わたしはメディア・アートに通じているわけでもないのだが、お呼びがかかって、今週末、初台のICCで、パリ第8大学の教授でもあり、きわめてソフィスティケートされた作品をつくっているジャン=ルイ・ボワシエさんと対話をすることになった。

作品は、ルソーをめぐるものらしく、はたしてわたしでお相手がつとまるかどうか不安だが、まあ、「時の流れ」に身をまかせよう。(4月19日(土)、ICC 4階特設会場。日仏通訳つき。問い合わせは、0120-144199、ないしhttp://www.ntticc.or.jp/)。

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