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時の彩り(つれづれ、草) 026

2008.03.07 小林康夫

☆ 

秋なら「もう秋か」だが、春はやはり「また春」。UTCPのオフィスの前の梅も満開。辛夷の蕾も大きく、いまにもはじけそう。この回帰してくる時間は喜びでもあるけど、どこか狂気じみたところもあって、心が騒ぐ。

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UTCPも中島さんのプログラムの国際会議が昨日から2日間にわたって行われていて、それにやってきたくれたジョエル・トラヴァールさん(EHESS)とも久しぶりに話ができた。北京からも王守常先生ほか多くの方が来訪してくれて、充実したコロキアムになっている様子。トラヴァールさんや王先生にもお話ししたが、わたしはもはや、有名な研究者を呼んでこれ見よがしの大規模の学術集会を行う時代はもう終わったと思っている。

それよりも、相互の研究や考え方をよく知り尽くした共同研究者が、小さな国際的なネットワークを構築して、それを継続的に動かすということが決定的に重要。ジョエルとヤスオとのあいだでどういう問題意識が共有できるか、継続的に語り合うことのほうが、一回だけの招聘で儀礼的な接待に振り回されることよりははるかに重要な意味があるというのがわたしの確信。UTCPもその方向で運営しようとしている。

だから、今回のように旧友がやってきてくれるのはとても嬉しい。実は、われわれの友情の暗号はなんと、ワーグナー!数年前、居酒屋ではじめてお会いしたときに、ワグナーをめぐる激論で親しくなったのでした。


☆ 40%

UTCPの来年度のPD補充公募も昨日締め切ったが、たくさんの応募があった。これから選考にはいるが、来年度予算もまたわれわれが要求している金額の、驚くなかれ!わずか40%で、しかも21世紀COE時代の予算額よりも少ない予算規模なので、とても若手研究者を多く採用することはできないのがつらいところ。

応募書類を見ても優秀な業績や学術タイトルを備えた多くの人が応募してきてくださっていて、こんなに多くの人たちに適切な研究の場がないのかと、胸が痛む思い。学術についての政治のひずみの結果だと言うのはたやすいが、そこでどうしたらいいのか、学問や大学にかかわる誰もが考えなければならない問題。UTCPもそのことに無関心ではいられない。

だが、同時に、UTCPはいかなる意味においても若手研究者の困窮の救済機関ではないので、やはりわれわれの独自の活動を最優先にしないわけにはいかない。われわれが目指す活動を前進させてくれる(と思われる)方々を採用することになるが、同時に、UTCPは、東京大学内部だけではなく、誰に対しても、開かれているつもりである。

これまでもUTCPの正規PDではない若手研究者もためらうことなくいっしょに海外に派遣したりしている。UTCPは「職」の提供機関でもなく「奨学金」の受給機関でもない。かなり過激な活動機関である。どうぞ、採否にかかわらず、その個々の活動に関心を寄せていただきたいし、そこに加わっていただきたい。


☆ Podcasting

ちょっとお知らせ。昨年12月に学術俯瞰講義としておこなわれた坂本龍一さんとの対談、「音楽はどこにある?」のポッドキャスト配信が始まりました。ご覧ください。
http://ocw.u-tokyo.ac.jp/course-list/ut-lecture-series/information-2007/movies.html

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