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時の彩り(つれづれ、草) 008

2007.10.25 小林康夫

☆ 来信(Andrew Feenberg)

オープニング・シンポジウムや各種の講演会・セミナーもはじまって忙しくなってきたが、この本格始動を祝うかのように、ヴァンクーヴァーのアンドリュー・フィンバーグさんからわたしにメールが届いた。

ハイデガー、マルクーゼを通して技術の哲学を考えているフィンバーグさん、第1期UTCPからの長いつきあい。こちらの若手研究者を連れてヴァンクーヴァーでセミナーをやらせていただいたのが、今回の教育プログラムの原型にもなっているので、UTCPの海外の友人の筆頭とも言うべき人ということになる。最近、「限界」(peras)という概念を発展させた新しい論文("Between Reason and Experience")をサイトに公開したという報せだった。さっそくダウンロードして読んでいるが、「経験」と「理性」のあいだの溝を「限界」概念でつなごうという試みは同時代の思考として共感が持てる。近くわたしのほうからの本格的な応答を試みて、その対話の結果を本サイトでも公表しようと考えている。事前の対話を深めた上で、また共同のセミナーも実現したいところ……


☆ オープニング・シンポジウム

「信」と「システム」のあいだで「困難な共生」が問われた興味深いシンポジウムだったが、これについてはすでに詳細な報告がブログになっている。その最後にも触れられているが、わたしとしては、個人的には、市野川さんが語ったガンディーの「非暴力の闘争」という言葉に少し感動したというか、ヒントを得たというか、いや、忘れていたものを思い出したというのがもっと正確か、なにかが少し見えたように思えたのが収穫。だが、リーダーとしてなら、PD・RAを含めて若手研究者が「全員」!――共同研究者の何人もともに――が参加してくれたのがなによりも嬉しかった。人文学の研究が本来的な傾向としてもつ「蛸壺」性を一概には否定しないが、しかしUTCPとしては、それと同時に、対話し、耳を傾け、討議するという場を共有することをこれからも大切にしていきたい。

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