醜悪なまでの非人間性を誇示している無機的なコンクリートの「壁」の垂直性は、おそらく最終的には人々の「恐怖」に根ざしているのであろうが、それゆえにけっして不幸を免れることのない近代国家の「重力」、もはや「道徳性」という次元を離れ、国家に委託された「歴史的存在」の暴力性を指し示しているのだと思われた。