今度は、もはやツェランの声ではなく、作品の冒頭でも響いていたジョン・ケージの「Nearly Stationary」とともに、水なき水底の滲み出る青の裂け目からわずかにまっすぐに伸び生えてきた雑草一茎を撮しながら、「生えてきている その驚異に 気がつくまでに これだけの時が 流れていきました」と静かに、吉増さんの声で、語りだす「誰か」がいるのである。