おそらく撮影順に配列されていると思われるそれ以前の4本は、まず最初の2本が、吉増剛造さんの世界にとってひとつの特権的な特異点とも言うべき立川基地に近い羽村の「まいまいず井戸」、そして3本目がブラジルの映像、さらに4本目が松島をテーマにしたものと続いてくるのだが、それらのいずれにも、記憶のある特異な場所、あるいは他のテクストによって指示された特異な感覚への接近という、すでにgozoCine+'を貫く行動原理が見てとれないわけではないが、しかしそれらがそれでもまだ、すでに十数年前よりテープレコーダーで言葉を吹き込みながら特定の場所を歩くこと、そして多重露光的な写真を撮ることを実践してきている吉増さんにとってのhabitus(ハビトゥス)の圏内におさまっているように思えるのに対して、この「プール平」では、それを超えて、明確な「映画」への意志が立ち上がってくる、その意味では、すべてがここからはじまるとも言いうる決定的な作品だとわたしは思う。