言うまでもないが、このテクストは、デリダが、いわば脱構築を導きながら、にもかかわらず(あるいは、それゆえ)それそのものはけっして脱構築不能なものとして「正義」――という、さあ、なんと言うべきか、観念でも理念でも単なる名でもない、ほとんど「(極)星」と言おうか――を呈示し言明していることにおいて、いわゆる後期デリダの政治-倫理的な哲学思考の支点を指し示すような決定的なテクストである。